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2009年10月26日 (月)

太宰 治「斜陽」を読んで・・・。

久々の読書記事です。
どうも、近頃読書に身が入らない・・・と言うか、すぐ寝てしまう・・・と言うか、とにかく、一時の事を思えば、ガタっと読書量の減っている私ですが、久しぶりに一気読みしてしまいました。

太宰 治生誕100年とかで、このところ、映画化が続き、本屋の店頭にも太宰の本が積み上げられています。

太宰は高校生の時に数冊読んで、それ以来大人になってからは読んでいなかったのですが、読売新聞10月20日付け、『「映画ヴィヨンの妻」を観て』という作家・角田光代さんのコラムを読んで、がぜん読んでみたくなりました。

見る側はまっぷたつに分かれるだろう。このちっともかっこよくない主人公にただひたすら嫌悪感を覚えるか、愛着を覚えるか。後者は好きになるという意味ではない。この弱い詩人の内に自身の姿を見る、ということだ。私は後者だ。
(中略)
私は作家の言葉に自分を見たから、夢中になってむさぼり読んだのだ。


この角田さんの文章を読んだ瞬間、
「あ~、そうだった。私も、太宰の本の中の、弱くて死の影をちらつかせる主人公たちにひかれていた。どうしてあんなにひかれていたのか、今ならわかる。」
と突然高校生の時の自分の気持ちを思い出した気がしました。

これは早速読んでみよう・・・と、本棚をあさってみると、残念ながら「ヴィヨンの妻」は見つかりませんでしたが、「斜陽」を見つけました。



「そう言えば、asaponさんのブログ で以前「斜陽」の事が載ってたなあ~。あの時読んでみようと思ってたのに忘れてたな。」
と思い出し、読み始めると・・・。
一気に眠気を感じる間もなく読み終えました。

確かに明るさのかけらもない私小説には、希望や勇気はもらえない。
だけど、安堵感というか、自分だけじゃないんだ・・・というか、私もそんな気分になる、なってもいいよね・・・という安心感といいますか、そんな思いが湧いてきました。


自分の居場所が見つからない。
私はいない方がいいのだ、という思い。
自分の弱さを受け入れられず、何とも生き辛い。

「斜陽」は没落貴族を描いた小説と言われていますが、没落貴族でなくとも、こうした鬱々とした思いを抱いた覚えのある人は多いのではないでしょうか。
10代の私も、確かにそんな気分に襲われていました。
友人関係で悩み、母親との確執に絶望し、さりとて非行に走るほどの勇気もなく、反対に不良化する弟を嫌悪しつつも放っておけなくて・・・。
この世を生きていくのは辛いことだと、その当時どこまで思っていたかは不明だが、そんな気分を抱いていたことは確かです。

太宰の本の中に出てくる抑うつ的な気分にひかれ、次々と太宰を読み漁った10代。
その後、自分の弱さを世の中のせいにして、自分勝手に死んでいく主人公たちに嫌気がさして、今日にいたるまで太宰は読んでいませんでした。


本から得るものには色々な感情があると思います。
生きる喜び、勇気、毎日の生活に役立つもの、悲しみ、苦々しさ・・・。
何らかの気付きを得た時の喜びや驚きは何ものにも変えがたい。
だが時には、
「あ~そう、私も同じだ。同じように弱い人間だ。」
とそう思えることで、癒されることもある・・・と思うのです。

生き難いと、そう思う自分の弱さが疎ましく感じる時、そんな気分を共有できるだけで、安心できる。
・・・そんな本もいいなあ~と、久々の太宰にそんな感想を持ちました。
10代の私とは違う、けど根本は変わらないであろう読後感。
気付けば、作家が亡くなった年齢を十も越えようとしている・・・。



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コメント

taeneeさん、こんにちは!!
「斜陽」の感想、読みましたconfident『嫌悪感』か、『愛着』かって、ホント絶妙な表現ですね。
太宰作品の暗さ、弱さ。あえてそれに身をゆだね、入れ物の底の方で、じーっとそれを味わう。
太宰を読むと、なんかそんな感じがします。
高校生の頃から、その深さが理解できていたなんて、taeteeさんは大人でらしたんですね。そして、今はもう、その弱さ・暗さを認めることもできるんですもの、やっぱり本物の大人だわ。
私はまだどうも幼いというか、自信もないくせに強気なところがあって、太宰は「メルヘン」って感じに受け取ってしまうんです。5年、10年おきに読んでみないと。。。なんて思ってます、太宰治。

asaponさんへ。
最近の少ない読書量の中でも、この本は久々にいい本だと思って記事にさせてもらいました。
確かに太宰はメルヘンっぽいかも・・・。
女々しいですしね。
私も一時はかなり嫌悪してましたし・・・。
角田さんのコラムを読んで、視点を変えて読んでみると、ビックリするほど心に響きました。
ただ、元気が出る・・・という事は皆無ですね。(^-^;

高校生の頃は、よくわかってなかったと思います。ただ何故か太宰に惹かれていて、たくさん読みました。
惹かれていた理由が今やっとわかった ( ̄○ ̄;)! ってくらいで、まだまだ幼い私です。

taeneeさん、こんにちは(^O^)またまたこの記事に戻ってきてしまってごめんなさいf^_^;


今、NHKの「知る楽・こだわり人物伝」を見ていたら、角田さんが太宰について語っていて………。
それがもう、いちいち頷くことばかり。
「思春期のひとは、太宰のもつ“途中感”に惹かれる」。
角田さんがお勧めしていた、「女生徒」「待つ」という小説、taeneeさんはお読みになったことがあるかしら。私はまだ………すごく読んでみたくなりました。読むと暗い気分になりそうではありますが……(^_^;)

asaponさんへ。
その番組見たかったです。角田さんの太宰に対する思いって、目からウロコではないですか?
私も新聞のコラムで読んで、すごくおもしろかったし、もう一度太宰に向かうきっかけになったんです。
「女生徒」は読んだ覚えがありますが、「待つ」は覚えがないです。今、家にもこの二冊はないので、本屋に行って買ってこなくっちゃ!
"途中感”・・・って、わかる気がします。数10年かかって、やっと太宰の世界がわかってきた・・・って感じです。
わからないより、わかった方がいいでしょうから、よしとしますか・・・。
asaponさんの太宰読書感想、期待して待ってます。
私も「女生徒」読んでみよう。そして、感想文書きますね。
なんだか、楽しみになってきたな~。ありがとうございます。

多くの人が評価する太宰治の作品って、どこが良いのか、何を言いたいのか解りません。何か暗くって、可哀想と言うのか気の毒で(読者にそこまで思わせる事が出来るから名著?)、結末は???
テーマは「恋と革命」でも6年間も待ってこれが恋?この間何も心の葛藤が無くてこれが恋?  直治の恋愛の相手は上原の妻?直治の遺書に洋画家と有るのは実は小説家のこと?そうだとすれば直治は本当は上原を馬鹿に(軽蔑)していたのか?  かず子はこれからどうやって生きるつもりだろう。生活の糧はないのに、「太陽のように生き」れるの?私生児と母が道徳革命の完成なのか?  太宰が本当に伝えたい事って??? 

フミさんへ。
古い記事を読んでいただき、コメントありがとうございます。

本って、人により好き嫌いが分かれるから、こんなにたくさんの本があっても、成り立ってるんだなあ~と思う事あります。

私も、一時期太宰を嫌悪していました。
でも、当時から愛着を感じていたことは確かです。

このブログで紹介した角田光代さんのコラムにもあるように・・・。

でも、好きになれない太宰の本も、フミさんは、とても深く読み込まれていらっしゃるのね。

ここへ寄せて下さった感想そのものが、フミさんの今のおもいなんだろうな~と、感じながら読ませていただきました。

それは、とても、凄い事ですね。
真面目さがとても現れている気がします。

お会いしたこともない方に、こんなこと書いて、失礼しました。

確かに、太宰は、わがままで暗い大人げない人かもしれないですね(笑)

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